連句2

選句2はこちら

立春の巻
平成24年弐月壱日:起首
平成24年参月弐八日:満尾

・初折の表・

01:北国の春風未だ厳しかり・鴻風
(発句)
東日本の太平洋側も、大雪の日本海側も、そして北海道も。
なべて北国は春風までも未だ厳しい。

02:廃家の庭にまんさく咲けり:紀子
(脇句)
北国の寒さを捨て、温かな南国や働きやすい大都会に住む場所を求めて家郷を捨てた。
その廃家にまんさくの花が咲きだした。

03:さだかにはあらねど初音かと思ふ:花惠
(三句)
廃家からは鳥の声も聞こえる。
今啼いたのは確かに鶯の初音だと思ったが。
万作の花が咲き鶯も啼きだした。
春が来ているよ。

04:禁煙区域で払ふ罰金:一勝
(四句)
鶯の初音を聞き、ゆったりとした気分になったら、
一服吸いたくなって火をつけたらここは禁煙区だったよ。
罰金は痛いよ。

05:真夜中の回転木馬照らす月:有亭
(五句)
今日も大勢の人が遊びに来てくれた。
罰金を払っていた人は可哀そうに。
明日も大勢の人が遊びに来ることだろう。

06:聞へてきさうジンタの響き:利久
(折端)
ファンタステイックな遊園地の眞夜中。
何処からかジンタの響きも聞こえてくる。
もう春もすぎ夏が感じられる夜だよ。

・初折の裏・

07:青空に泳ぐ千匹鯉のぼり:朋子
(初句)
季節も春から夏に移った。
川幅いっぱいに千匹もの鯉のぼりが泳いでいる。
子供たちが両手をあげて子供の日を謳歌している。

08:粽食べつつ母を迎へに:鴻風
(二句)
鯉のぼりを見上げている間に夕方になってしまった。
お母さんが帰ってくる時間だ。
駅まで迎えに行こうよ。

09:子どもらは白詰草の首飾り:千枝
(三句)
此処は花の定座である。
お母さんを迎えに行く子供らの首には白詰草の首飾りが揺れている。

10:夢の浅瀬を跳んで行きたし:江梅
(四句)
子供頃には大きな夢がある。
その夢に向かって子供達は浅瀬を跳んでゆくのである。
浅瀬が意外と深みでもあるのだ。    

11:糸切れしままの風鈴ぼくの家:清月
(五句)
風鈴の舌(ぜつ)の糸がならない。
帰ったらつけてやろう。
これも小さな夢かもしれない。
「父の家」は「ぼくの家」でもあるのだ。

12:酒のつまみは訳ありの品:瓢花
(六句)
ぼくの家には父も母もおじいちゃんもおばあちゃんも、兄も姉も弟も妹もいるんだ。
お父さんの酒のつまみにはね・・・。    

13:夏の恋三段論法割愛す:夕花
(七句)
知り合い、食事をし、手を握りなどと言う恋につきものの、三段論法は一切省略した恋。
こんな恋をできる人に私はなりたい。

14:自販機で買ふカルピスウオーター:利久
(八句)
恋の営みの終わったあとの口の渇きには、カルピスウオーターを買うに限る。
あすは夏の月の満月だ。
月がきれいである。 

15:窓からの月光に吠え木彫熊:亀庵
(九句)
木彫熊も時には月に向かって吠えたくなることもあるのだ。
窓から差し込む月光を見ていると北海道が思い出されるのである。

16:日付変はりし深夜の帰宅:薫子
(十句)
今日も旦那の帰りが遅い。
どこで飲んだくれているのか。
熊に食われて死んでも知らないんだから。
帰ってきたよ。

17:故郷へ行く道すがら夾竹桃:良子
(十一句)
たまには故郷に帰って墓参りでもしないと、ご先祖さまが
「お前らも早く来い〜」
と呼んでいる気がしてならないよ。

18:海辺を走る一両電車:清月
(折端)
故郷までは海辺を走る一両電車に乗らないと行かれないのだ。
とちゃんも、かちゃんも元気でいるだろうなぁ〜

 名残の表

19:秋色にマラソン人の駆抜けり:有亭
(折立)
どこか秋の色が濃くなってきた。
秋はスポーツの季節である。
オリンピック出場を目指して走っているのだが。

20:スカイツリーの蒼穹を突く:花恵
(二句)
35000人が走る東京マラソンだ。
4年かかって完成されたスカイツリーも青空に突き刺さるように立っている。

21:稲刈りへアクアラインをひた走る:薫子
(三句)
今年もアクアラインに車を走らせて稲刈りに行こう。
それにしても便利になったよ。
今年は10月にマラソン大会もあるよ。

22:最後尾でも間に合へばいい:千枝
(四句)
今年の稲刈りも我が田だけ取り残された感じもするが、
いいじゃないかたとえ最後尾であっても間にあえばそれでいいんだよ

23:金婚の屏風をひらく良夜かな・一勝
(五句)
間にあったよ。
今日は両親の金婚式なんだ。息子として遅れたらなんと云われたことか。
金屏を開いてこれから祝賀の宴だ。 

24:祝ひの膳の鮮やかな色:紀子
(六句)
金婚式の祝いの膳だから鮮やかな朱色がいい。
振り返るとお前にも随分と苦労をかけて来たもんだ。いいよな。
夫婦だもの。

25:赤い羽根つけて駆け込む新幹線:清月
(七句)
最後尾でもいいと参加した金婚式だったが、帰りは新幹線で帰ろう。
俺も北海道新幹線には乗れないで死んで行くのか。

26:峰を並べる大和三山:弘務
(八句)
車窓からは大和三山の耳成山・香具山・畝傍山が見える。
万葉の時代からたくさんの歌に詠まれた山々である。
弁当を食うか。

27;一時間一本のバス彼岸花:千廣
(九句)
山から来るバスは1時間に1本しかないのだ。
だから乗り遅れないためには、1時間前から来て待っているんです。

28:夫婦して飲むワンカップ酒:美秋
(十句)
彼岸参りで、お墓にお供えした酒を下ろして墓前で夫婦していただく。
これが死者への最大の供養である。
温かな秋の日。

29:不揃ひの磴百段紅葉山;江梅
(11句)
せっかく此処まで来たんだ。
酒の勢いを借りてあと百段の磴を登ろうじゃないか。
紅葉の名所と言われる山があるんだ。

30:山ガールらのスタイル満点:薫子  
(12句)
わしらは不揃いの石坂を一段ずつ登っているのに、山ガールは颯爽と軽々しく登って行くよ。
わしらにも若い時はあったのだ。   

名残の裏

31:影ふたつ路地より消へし風の盆:利久
(一句)
いつの間にか二人の影が消えているけれど、何処にいったんだい。
今夜は風の盆で胡弓の音も切なく聞こえるではないか。  

32:知らせあひたるメールアドレス:千枝
(二句)
二人の影が消えたかと思うと、メールアドレスの交換をしていたんだ。
まずはメルアドの交換から恋は始まるのだ。

33:落葉焼く煙一筋西の空:弘務
(三句)
場面は変わって初冬の景である。
毎日降る落葉に感慨をこめて燃やすのだがひとすじの煙は西空へと流れる。
この香煙を友への手向けとしよう。

34:冬田道行くスキップの子等:有亭
(四句)
西空にはすでに一番星も出ている。
家々には冬の灯りがともり始めた、スキップをしながら帰ろう。
お母さんが待っている。

35:寒菊やまとふ光を励みとし:鴻風
(五句)
寒菊には独特の雰囲気がある。
この寒菊を俳句会の主宰なら、寒菊を取り巻く光耀くたくさんの人に励まされているのだ。

36:一歩一歩の足を踏みしめ:千廣
(挙句)
寒菊は枯れても、一人一人が一歩一歩足を踏みしめて俳句の道を進んで行って欲しい。
「句写美」が終刊になろうとも。
俳句の道は世界へと通じているのだ。満尾