音俳句・本日の一句
選者・夏井いつき
2010年4月〜2013年6月30日で終了
掲載句全63句
「音G賞」1句
俳号・ヤッチー
音G賞賞品
音俳句my備忘録
番号 | 俳句 | 季語 | 季節 | 評価 | 講評 | 日付 |
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63 | 閉会の柝の音響けり虎が雨 へいかいのきのねひびけりとらがあめ |
虎が雨 | 夏 | 本日の入選作 | 「これにて閉会します」という合図の「柝」が響き渡ります。「虎が雨」は、曾我兄弟にまつわるエピソードを抱いた季語。意味深な季語をもってこられましたなあ、ヤッチーさん(笑)。 【毎日の組長様のコメントは勉強になりかつ抱腹絶倒のナンジャコレで組長様の人柄そのもの(?)を感じてきました。組長様お体くれぐれもご自愛くださいませ。ありがとうございました。岡田様お疲れ様でございました。私、音G賞をいただいておりますので(自慢!)気持ちよくお別れができます。ありがとうございました。/ヤッチー】ははは!ナンジャコレ組長のワタクシでございます。これに懲りずに、末永くお付き合い下さいね〜(笑)。 |
2013.6.24 |
62 | 走馬灯百五十字のタイプ打つ そうまとうひゃくごじゅうじのたいぷうつ |
走馬灯 | 夏 | 本日の入選作 | 【「タイプ」と言う言葉が気になって推敲しました。原句:走馬灯百五十字のタイプ打つ(打つ打つみたい?)推敲句:走馬灯百五十字を打つタイプ(ライター)/たいした推敲ではないかもです。】ハイ、この二句の違いは、焦点をどこに当てて終わるかという問題になります。前句は「打つ」という動作、後句は「タイプ」という機械の存在(への思い入れ)。さあ、ヤッチーさんはどちらを表現したかったのでしょうか。最終回へのこんなお便りも届いています。【私は音俳句で組長様から俳句の楽しさと難しさを教えていただきました。音俳句が終わっても俳句は千古不磨。楽しく勉強していきます。組長様と岡田様おつかれさまでした。そしてありがとうございました。】 | |
61 | 君が代は空で歌へる花菜漬 きみがよはそらでうたえるはななづけ |
花菜漬け | 夏 | 本日の入選作 | なぜ、ここで「君が代」が出てきたかというと…【国技館といえば君が代ですが】というわけだったか、ヤッチーさん(笑)。「君が代は空で歌へる」というフレーズに、季語「花菜漬」が取り合わせられると、学校で「君が代」を歌った頃を懐かしんでいる、という味わいになりますね。この句、取り合わせる語を変えると、不穏にも荘厳にも滑稽にも読めてくるでしょうね〜。 | 2013.5.22 |
60 | 高麗屋力士となりて見得を切る こうらいやりきしとなりてみえをきる |
無季語 | なし | 本日の入選作 | 【歌舞伎の「双蝶々曲輪日記の角力場」は相撲取が出てくる楽しい演目です。私てきには染様演じる大阪のぼんぼん与五郎が最高ですが】と語るヤッチーさんから、質問が届いています。【演目で役者が力士になっているのですが季語としてなりたちますか?お教えください。】うーむ、これを季語として認識するのは、かなり難しいと思います。というか「相撲」という季語そのものが季節感を失っていることも(ましてや「力士」という言葉も)遠因でしょう。が、その理由のみで、この句を捨てる必要もないかと思います。この場の光景がありありと見えてくるのが、この句の力でありますから。 | 2013.5.13 |
59 | 激安の春旅オプションディナーショー げきやすのはるたびおぷしょんでぃなーしょー |
春旅 | 春 | 本日の一句 三分咲き |
【激安の旅はオプションずくめです。】ははは!たしかに「激安」には激安の意味がありますもんねえ。「オプション」で選べる!なんて文句に弱いワタクシですが、気づいてみれば、あれも見たい、ここにも行きたいと結局のところ浪費してしまいます。「ディナーショー」の「オプション」は断って、露店の買い食いで夕飯を済ませましょうかね(笑)。 | 2013.4.10 |
58 | 蛇出づや銜へ煙草のピンボール へびいずやくわえたばこのぴんぼーる |
蛇出づ | 春 | 本日の入選作 | 【ピンと言う音だけに焦点を絞ってみました】という発想だってあっていい〜!それが「音俳句」の楽しみ方だもんね〜♪ それにしても「ピンボール」なんてイマドキは置いてないんだろうなあと思って調べてみたら、【ビデオゲーム化もなされており】なんて書いてあって吃驚ぢゃ!私らが若い頃は、健全な不良たち?が集まって「銜へ煙草」でやってたよな。懐かしい光景でありますよ。上五の季語「蛇出づや」の空気が、あの時代の気分にぴったりだね。 | 2013.3.30 |
57 | 満席の機体復活祭の地へ まんせきのきたいふっかつさいのちえ |
復活祭 | 春 | 本日の入選作 | 「復活祭の地へ」の「へ」は方向を示す助詞ですから、今、そこに飛び立つ、あるいは飛んでいると読むべきでしょうね。「機体」という即物的な言い方は、どちらかというと、飛び立とうとしてる…というニュアンスに受け取れるかな。【2月1日の先生のおっしゃることがよくわかりました。放歌高吟も読ませていただきました。結論、私は季語を入れた俳句を詠んででいこうと決心しました。】ハイ、私も有季定型を基本として俳句を作っています。ただ、読み手としては無季句や自由律も含めて、さまざまな詩の価値を感じ取れる俳人でありたいと願って、日々精進しております。
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2013.3.28 |
56 | 恐竜の生ふるひび割れ養花天 きょうりゅうのおうるひびわれようかてん |
養花天 | 春 | 本日の入選作 | 「生ふ」という動詞は【植物などが大きく育つ】という意味かと思うので、その一点にささやかな違和感あるのですが、「恐竜の生ふるひび割れ」が、恐竜の卵のひび割れを意味すると解釈すれば、「養花天」という季語との取り合わせはいいなあと思います。 「養花天(ようかてん)」とは「花曇」のこと。生き物が生まれてくる湿度と温度が、こんな感じじゃないのかなあ。 |
2013.2.27 |
55 | 湯気立てる鍋に飛込む刀削麺 ゆげたてるなべにとびこむとうしょうめん |
湯気立て | 冬 | 本日の入選作 | 【刀削麺を削る音を聞いたことがないのですがイメージでお許しください。今月の音はいろいろに聞こえて沢山投句してしまいましたが幾つ先生に拾っていただけるでしょうか。楽しみです。】 ちょっと笑えました、この句〜。 「刀削麺」の削る音は勿論のこと、現物を見たことすらないのですが、ネットで調べてちょっと納得。 プチ俳句講座「湯気立て」ってどんな季語? たしかに冬の季語として「湯気立て」はあるのですが、これは室内の乾燥を防ぐためにストーブや火鉢に薬缶をかけておくことを言います。 この句の「湯気立て」は、どう考えてもその使途が違うよなあ(笑)。 |
2013.2.24 |
54 | 凍解や纏まる予感する見合 いてどけやまとまるよかんするみあい |
凍解 | 春 | 本日の入選作 | 「纏(まと)まる予感って何だろう?…と思ったとたん、「見合」という正解がでてくるのが可笑しい一句。「凍解や」が、長い長い婚活を思わせるようで、これまた可笑しい(笑)。 | 2013.2.12 |
53 | 魚は氷に上るすなはち先取りね うおはひにのぼるすなわちさきどりね |
魚は氷に上る | 春 | 本日の入選作 | 難しい時候の季語「魚氷に上る(うおひにのぼる)」を、ストレートに解説した(笑)一句ですな〜♪【12月の最優秀賞について。先生のコメントは「無季とはいえ季節感を大いに内包している類の句として味わってみるのはいかがでしょうか〜♪」との事。最優秀賞だぜ!今日のプチ俳句講座じゃねえのかよ!失礼いたしました。言葉が乱暴になってしまいました。季語に頼って句作することに必死な自分の反省材料になりました。】 俳句にはいろんな作り方があり、味わい方があります。作句も鑑賞も価値基準が一つでないところが面白いのだと思います。私は俳句が大好きなので、いろんな俳句の佳さが味わえ、いろんな種類の俳句が作れる体になりたいと切望しています。それもまた俳人修業の楽しみです〜♪ ブログ『夏井いつきの100年俳句日記』にも「放歌高吟」というカテゴリーで作品を載せています。よかったら読んでね、ヤッチーさん! | 2013,2,1 |
52 | 鳥刺しの獲物自慢や春の色 とりさしのえものじまんやはるのいろ |
春の色 | 春 | 本日の一句 五分咲き |
新年の門付け芸としての「鳥刺し」もあれば、鳥を捕る人という意味もある「鳥刺し」。ワタシは、歌劇「魔笛」のパパゲーノを想像。季語「春の色」の明るさがそれを想像させたのかなあ。作者ヤッチーさんの弁を読んでみると、当たり!でした。【魔笛のパパゲーノのような人達の集まりを想像。 捕らえられたカラフルな鳥たちの鳴き声が賑やかです。】 |
2013.1.18 |
51 | 涅槃会の御供物狙ふ鳥数多 ねはんえのおくもつねらうとりあまた |
涅槃会 | 春 | 本日の入選作 | 「涅槃会(ねはんえ)」は春の季語。【陰暦2月15日の釈迦(しゃか)入滅の日に行う法会】のことです。「今月の音」は、チベットのお坊さんたちのお経で、そこに並べられた「お供物」を鳥たちが狙っている、という光景かもね。下五「鳥数多」というまとめ方も巧みでした。 | 2013.1.18 |
50 | 蝶々雲出でて逃込む音楽室 ちょうちょうぐもいでてにげこむおんがくしつ |
蝶々雲 | 冬 | 本日の入選作 | 【絶滅危急季語辞典より探した面白い季語を使いました】というヤッチーさん。夏井いつき著『絶滅危急季語辞典』ご愛読いただきましてありがとう〜(笑)。「蝶々雲」って、一見かわいい感じがしますが、実はそうではありません。なんせ「逃げ込む」って書いてあるから、そのイメージは伝わるだろうと思います。何だろうと好奇心がかき立てられた方は、是非『絶滅危急季語辞典』読んでね〜♪ | 2012.12.17 |
49 | 放課後の部活の顧問木の葉髪 ほうかごのぶかつのこもんこのはがみ |
木の葉髪 | 秋 | 本日の入選作 | 下五「木の葉髪」という季語が切ないなあ(苦笑)。なんの「部活の顧問」かは分かりませんが、授業もして「放課後」は部活動の指導もして、先生は大変だよな〜と同情してしまった一句。 | 2012.12.16 |
48 | ワグナーの曲朝凪を掻き乱す わぐなーのきょくあさなぎをかきみだす |
朝凪 | 夏 | 本日の入選作 | 【カウントダウンを無視して、ヘリコプターの音から映画「地獄の黙示録」をイメージしました。】というヤッチーさん。なるほど、そこから「ワーグナー」がでてきたわけですか。「朝凪」は夏の季語。【海岸地方で、陸風から海風に交代する朝方に、一時無風状態になること】をいいます。下五「掻き乱す」が、ヘリコプターの音を活写しました。 | 2012.11.25 |
47 | 秒読みに柚子湯出られずのぼせる子 びょうよみにゆずゆでられずのぼせるこ |
柚子湯 | 冬 | 本日の一句 つぼみ |
【カウントダウンが耳に残ってしまいました】というヤッチーさん。そこから、こんなほのぼのとした光景を連想。子どもとしても、親としても、この場面経験したなあ〜と微笑ましく。「柚子湯」は冬の季語。歳時記には【冬至の日に、柚子の実を刻んで入れる浴湯】とありますが、丸いまんま入れたことしかないなあ。ひび・あかぎれに効く柚子湯だそうです。 | 2012.11.5 |
46 | ロザリオ祭向ふ船尾に聖歌隊 ろざりおさいむかうせんびにせいかたい 添削句 ロザリオ祭へ向ふ船尾に聖歌隊 |
ロザリオ祭 | 秋 | 本日の一句 七分咲き |
【ロザリオ祭も聖歌隊も認識がないのですが音からのイメージで申し訳ありません】と詫びて下さってる(笑)ヤッチーさん。この句意でしたら、上五字余りにはなりますが「ロザリオ祭へ」とした方が無難でしょう。「ロザリオ祭」へ向かう晴れやかな心、観衆のざわめきに対して、「船尾に聖歌隊」という場の描写が巧い一句。脳内吟行でここまでやれたらご立派です! | 2012.10.26 |
45 | チリ人の貸切ツアー月見船 ちりじんのかしきりつあーつきみぶね |
月見船 | 秋 | 本日の入選作 | おおー、あの賑やかさは観光船だったか!でも、なんで「チリ」なんだろう?【隅田川の屋台舟に外国の団体さんが乗っているのを想像しました。上五のなかに外国の国名を入れるのにはタイかチリしかなく迷ってチリにしました。】ははは!音数の都合ね。でも妙に「チリ」がいい味だしてます。 | 2012.10.17 |
44 | 治聾酒の薀蓄語り振舞へり じろうしゅのうんちくかたりふるまえり |
治聾酒 | 春 | 本日の入選作 | もう一句、ヤッチーさん。「治聾酒」は「じろうしゅ」と読みます。【立春から5番目の戌(いぬ)の日に、土地の神に供える酒。また、この日に飲む酒。この日に酒を飲むと耳の障害が治るという】というのが辞書の解説。「薀蓄」を語り、「振舞」っている賑やかさが、「今月の音」の正体だとは吃驚!外国の方々にこの酒を説明し振舞うという発想が愉快です。 | 2012.9.15 |
43 | 手荷物の後生大事や菊枕 てにもつのごしょうだいじやきくまくら |
菊枕 | 秋 | 本日の入選作 | 絶滅寸前季語に挑戦する人々!「菊枕(きくまくら)」とは【干した菊の花びらを入れて作った枕。香りがよく、頭痛や目の病いなどに効能があるという】と辞書には解説があります。中には【不老不死に効くと言われた】と書いてある歳時記もあります。枕が替わると寝られないなんて人もいますが、「手荷物」の中に入れてあるのが「菊枕」となれば、尚更の「後生大事」でありますね。【国際線の飛行機に乗ると自分の枕を持ち込む旅なれた若者を見かけます。長距離列車にもそんな人がいるかも知れません】と語る、ヤッチーさんです。 | 2012.9.15 |
42 | 薄物の裾翻し予約席 うすもののすそひるがえしよやくせき 添削句 羅の裾翻し予約席 |
薄物 | 夏 | 本日の入選作 | 【豪華列車の旅のディナーはドレスコードがあります。正装で食堂車に向かいます。】おおー、こんな旅も一回ぐらいは経験したいなあ(@ちょっとめんどくさそうだけど〜)。「薄物」は「羅(うすもの)」と書くと、さらに高級感が生れますよ。「羅」は夏の季語になります。 | 2012.8.24 |
41 | 蝸牛厨房逃出す二三匹 かたつむりちゅうぼうにげだすにさんびき |
蝸牛 | 夏 | 本日の入選作 | 今日の質問。【豪華列車の旅のディナーはフルコースです。コック達は腕を振るっています。質問です。蝸牛の一種であるエスカルゴをイメージしたのですが、エスカルゴは季語になるでしょうか?】うーむ、「エスカルゴ」ですか?私の知っている限りでは、歳時記に載っているとは思えないのですが…皆さんがお持ちの歳時記に「エスカルゴ」が載っているかどうか、情報お寄せ下さい〜。 | 2012.8.14 |
40 | 牛蛙狙ふ業者の忍び足 うしがえるねらうぎょうしゃのしのびあし |
牛蛙 | 夏 | 本日の入選作 | 【牛蛙は食用になるらしい。夫は日本でもアメリカでも食べたことがあると言っていた】と言われてもアナタ…。そう言えば、何年か前に高知の夜の屋台をウロウロしてたら、蛙を乾燥させたみたいなのがやたらぶら下げてある店があって、ワタクシ少々ビビりました。 | 2012.7.10 |
39 | 石蹴りのケンケンパーや経木帽 いしけりのけんけんぱーやきょうぎぼう |
経木帽 | 夏 | 本日の入選作 | 【小石を投げるような音で石蹴りのイメージが沸きました。後は「絶滅危急季語辞典」で季語探しです。面白いもの見つけました!】というヤッチーさん。よくもまあ、こんなマニアックな季語をと思いますが、似合ってるっちゃ似合ってるか(笑)。「経木帽」とはいかなるものか、是非夏井いつき著『絶滅危急季語辞典』(ちくま文庫)を開いてみて下さい(@絶賛発売中!)。 | 2012.6.17 |
38 | 丁半の博徒諸肌脱ぎにけり ちょうはんのばくともろはだぬぎにけり |
諸肌脱ぎ | 夏 | 本日の入選作 | 【賭け事に興じているような雰囲気を感じました】というヤッチーさんは、サイコロ賭博の場面にワープ!「裸」が夏の季語ですから、「諸肌脱ぎ」もその範疇と考えていいんだろうな(笑)。 | 2012.6.6 |
37 | ハイヒール踵壊れる五月病 はいひーるかかとくずれるごがつびょう |
五月病 | 夏 | 本日の入選作 | 【私のOL時代にはガード下に靴修理のおじさんが居ました】と懐かしい光景を思い出してくれたヤッチーさん。「五月病」ってのが踏んだり蹴ったりの気分(苦笑)。 | 2012.5.8 |
36 | 出る杭は打たれ強いぞ菖蒲酒 でるくいはうたれづよいぞしょうぶざけ |
菖蒲酒 | 夏 | 本日の一句 つぼみ |
ははは!【菖蒲酒は端午の節句に飲んで邪気をはらうらしいが子供がこれを飲んだのだろうか】なんてコメントも添えてありました。ヤッチーさん、ワタクシもこれまでの人生、「出る杭」として様々な機会に打たれ続けて参りましたが、いやはや「出る杭は打たれ強いぞ」の台詞と季語「菖蒲酒」の取り合わせ、胸がすくような一句でございますよ〜(笑)。 | 2012.5.5 |
35 | 守護神のケビンとアシュトン炎ゆる日々 しゅごしんのけびんとあしゅとんもゆるひび |
炎ゆる | 夏 | 本日の入選作 | だ、だれだ?【「守護神」はアメリカ沿岸警備隊を主人公にしたアクション】成程、それで季語が「炎ゆ」か! | 2012.4.22 |
34 | 尾類馬の支度整ふ玉三郎 じゅりうまのしたくととのうたまさぶろう |
尾類馬 | 新年 | 本日の一句 五分咲き |
【玉三郎の揚巻、八つ橋も素敵ですが尾類姿も見たいもの】というヤッチーさん。難しい季語に挑戦しましたね〜(笑)。「尾類馬」は沖縄の踊りにして、拙著『絶滅危急季語辞典』(ちくま文庫)にも取り上げた新年の季語。305ページを開いて、読み直してみれば、なんと例句の中にヤッチーさんの句も入っていて吃驚!季語保存運動へのご協力、感謝深謝〜。 |
2012.3.16 |
33 | 餅搗唄聞きつ水仕の女衆 もちつきうたききつみずしのおなごしゅう |
餅搗唄 | 冬 | 本日の一句 五分咲き |
【実際に餅搗きをしたことがないのでわかりませんが、きっと女性たちも忙しく立ち働いていることでしょう】と語るヤッチーさん。かつての我が実家では毎年やってましたが、「女衆」の方が忙しく立ち働いてましたね〜。「餅搗唄聞きつ」という措辞が、裏方として立ち働く「水仕の女衆」を表現しています。昭和というよりは明治の頃の感触の一句。 | 2012.2.19 |
32 | 緑の週間JICAに協力する与作 みどりのしゅうかんじゃいかにきょうりょくするよさく |
緑の週間 | 春 | 本日の入選作 | こちらは国際協力機構(ジャイカ)が登場。「与作」さんは、樵(きこり)の技術協力のために、斧をかついで山から下りてきているわけか〜。発想が何とも愉快です(笑)。 | 2012.2.2 |
31 | ホグワーツ特急照らす寒の月 ぼぐわーつとっきゅうてらすかんのつき |
寒の月 | 冬 | 本日の入選作 | 「ホグワーツ特急」は、ハリーポッターの物語に出てくる蒸気機関車です。「今月の音」の世界には、森番ハグリットがカンテラを提げ、生徒たちを出迎える駅も見えていたに違いありません。 | 2012.1.29 |
30 | 貌鳥を目掛けバンジージャンプかな かおどりをめがけばんじーじゃんぷかな |
貌鳥 | 春 | 本日の入選作 | 絶滅寸前季語に挑戦!「貌鳥(かおどり)」という季語は、なんと実体不明な鳥。それを季語にしてしまうのが俳人の愉快でありましょう。 | 2012.1.10 |
29 | 花入れの梅端然と香りをり はないれのうめたんぜんとかおりをり |
梅 | 春 | 本日の入選作 | 【お茶席の茶花は指定席で礼儀正しい香りを放っているような気がします】と語るヤッチーさんも、「今月の音」をお茶席と聴き取っての一句。音の向こうに「梅」をキャッチした嗅覚に共感します。 | 2011.12.22 |
28 | 泳ぎ子に付かず離れず父の舟 およぎこにつかずはなれずちちのふね |
泳ぎ子 | 夏 | ![]() |
ヤッチーさんもやはり子供のことを詠んでいらっしゃいますが、コメントを読むとこちらはシビアな状況です。 「ワニが出そうな川でもお父さんは平気で子供を泳がせます。 お父さんは舟の中からしっかり子供を監視しているから大丈夫なのです。」 音Gもワニのいる湿地や川で何度もロケをしましたが、流石にそこでカヤックをする勇気はなかったです(笑) | 2011.11.30 |
27 | 春を待つ羊膜液に浸り待つ はるをまつようまくえきにひたりまつ |
春 | 春 | 本日の入選作 | 水は水でも、こちらは「羊膜液」つまり羊水のことですね。水中にいるかのようなくぐもった泡の音がしたと、私の耳も聴き取ったのですが、その感覚が「羊膜液」の中にいる自分を想像させたのでしょう。こんな言葉を詩語として成立させているのが「春待つ」という季語の力。「待つ」のリフレインもいいですね。 |
2011.11.29 |
26 | 爽籟やガレージセールのアーミッシュ そうらいやかれーじせーるのあーみっしゅ |
爽籟 | 秋 | 本日の入選作 | 「アーミッシュ」を思った人がもう一人いました。【水車?馬車?ということはアーミッシュ?アーミッシュは物を大事に使うといわれガレージセールを頻繁に行うと何処かに書いてあったのを思い出しました。】季語「爽籟(そうらい)」は秋の爽やかな風のことをいいます。 | 2011.10.14 |
25 | 密林に紅一点の海紅豆 みつりんにこういってんのかいこうず |
海紅豆 | 夏 | 本日の入選作 | 「海紅豆」は「かいこうず」と読む夏の季語。アメリカデイゴの花のことです。犇くような「密林」に高々と花をかかげる様子が印象的な一句です | 2011.9.21 |
24 | 星の入東風乱れし髪の艶かし ほしのいりごちみだれしかみのなまめかし |
星の入東風 | 冬 | 本日の入選作 | 星の入東風(ほしのいりごち)」という難しい季語に挑戦してくれた一句。【レーシングカーのような音から映画「男と女」をイメージ。浜辺で抱き合うシーンは二人の周りをぐるぐる回るカメラワークが素敵です。でもアヌークの髪の毛がアヌークの顔を覆ってほとんど見えないのです。ちなみに続編の「男と女2」も好きな映画です。】 | 2011.8.27 |
23 | 行くべきか行かざるべきか髪洗う いくべきかいかざるべきかかみあらう |
髪洗う | 夏 | 本日の一句 五分咲き |
ハムレットが乗り移ったかのような台詞。季語「髪洗う」によって、台詞の意味が示唆される点がミソですね!【実は季語「髪洗う」はこの句を投句した5月24日に「本日の一句」で詠まれていました。真似をしたわけではありませんので悪しからず】というコメントも。季語は共有の宝物ですから、素敵な季語に出会ったらどんどん使って下さい(笑)。 | 2011.7.18 |
22 | 井の中の蛙扉を乗越へず いのなかのかわずとびらをのりこえず |
蛙 | 春 | 本日の入選作 | 同じくカエルがでてきますがこちらは「今月の音」から鉄扉を発想しての一句でしょうか。 | 2011.7.4 |
21 | 嗚呼といふアリスの声や青嵐 ああというありすのこえやあおあらし |
青嵐 | 夏 | 本日の入選作 | 「今月の音」がそう聞こえましたかシリーズ。不思議の国のアリスが落ちていく穴!という発想に脱帽の一句です。 | 2011.6.21 |
20 |
謝恩会顧問の胸にリラの花 |
リラ | 春 | 本日の一句 七分咲き |
「今月の音」から、「部活」→「顧問」→「謝恩会」と連想が広がっていったのでしょうね。【謝恩会に部活のビデオが流されています。顧問の先生を囲み話が弾みます】と語るヤッチーさん。「胸」につけた「リラの花」飾りという具体的なモノを想像できるようになれば、「音俳句」吟行は自由自在に楽しめます。匂やかな「リラ」の美しいこと! | 2011.5.25 |
19 | 鶯の付子に淡い恋心 うぐいすのつけこにあわいこいごころ |
鶯の付子 | 夏 | 本日の入選作 | さらに「絶滅寸前季語」に挑戦!シリーズ。この句の季語は分かりますか?…鶯(うぐいす)?…ちょっと違います。答えは「鶯の付子(うぐいすのつけこ)」です。ええー?なにそれ?と首を傾げた方は、前述の辞典にてその理由をお確かめ下さい(爆笑)。【優しく教えてくれる部活の先輩には同性ながら憧れや恋心をいだいてしまいます。先生のブログで絶滅季語句の募集をしていました。この季語、こんな使い方をしてもいいのでしょうか?】という質問も寄せてくれたヤッチーさん。うーむ…比喩の句だと考えるべきか。考えれば考えれるほどビミョーにして意味深な一句。 | 2011.5.21 |
18 | 飴切りの松屋に掛かる夏暖簾 あめきりのまつやにかかるなつのれん |
夏暖簾 | 夏 | 本日の入選作 | 【これはまさに松屋の飴切りの音です】と店の名まで言い当ててるのが、スゴイよ?!「松屋」という固有名詞が「夏暖簾」に書かれた文字まで、見せてくれて愉快。 | 2011.4.25 |
17 | 座頭市祭りの夜の仕込み杖 ざとういちまつりのよるのしこみづえ |
祭 | 夏 | 本日の入選作 | 【北野武監督の映画「座頭市」では下駄のタップダンスが独創的でした】と語るヤッチーさん。私はこの映画は見たことがないんですが、下駄のタップダンスなんてやってんですか?!吃驚しつつも、北野武監督ならば想像に難くない場面。下五「仕込み杖」と名詞止したところがシブイ一句です。 | 2011.4.13 |
16 |
冬の駅見え隠れするソフト帽 |
冬の駅 | 冬 | 本日の一句 五分咲き |
【今回も映画ネタ。「アンタッチャブル」より。銃撃戦が始まる前のシカゴ駅の嵐の前の静けさを感じました。ケビン・コスナー、アンディ・ガルシアかっこいいのです!】と語るヤッチーは、「音俳句」の世界からさまざまな名画の世界へのワープを楽しんでくれます。「駅」という場所の「冬」という表情が「ソフト帽」の存在を演出します。 | 2011.3.18 |
15 | 5バーツの定期船乗り恵方道 ごばーつのていきせんのりえほうみち |
恵方道 | 新年 | 本日の一句 七分咲き |
【12年前のタイ旅行でチャオプラヤー川の定期船に乗りお寺を眺めたことを思い出しました。船賃は5バーツだか10バーツだかはっきり覚えていません。「ゴバーツノ」で5音に納めました。】と語るヤッチーさん。リズムを整えるための小さなフィクションはOK。「恵方道」というクラシカルな季語とのミスマッチが面白い味わいとなっている作品です。 |
2011.2.22 |
14 | 秋麗やお蝶夫人の四頭筋 しゅうれいやおちょうふじんのよんとうきん |
秋麗 | 秋 | 本日の入選作 | 【テニスと言えば「エースをねらえ」のお蝶夫人です。11月の音俳句は皆さんの凄い想像力で圧倒されました。俳句を詠むことよりいかに鋭いイメージを感じるかが勝負ですね。あれ?これって変かな?】いえいえ、変ではありません。「今月の音」の奥に何を見出すかを楽しむのが「音俳句」。懐かしの「お蝶夫人」を引っ張り出すあなたの想像力に乾杯です〜♪ | 2011.1.14 |
13 | 蕎麦食へば鐘が鳴るなり深大寺 そばくえばかねがなるなりじんだいじ |
無季語 | 無季 | 本日の入選作 | 今日の質問。【子規さんは法隆寺で柿を、私は深大寺で蕎麦を食べました。ところで「蕎麦」は季語になりませんか?】という質問です。「蕎麦掻」「蕎麦の花」「蕎麦刈」等は季語ですが、「蕎麦」だけでは季語にはならないようです。「新蕎麦」ぐらいは季語になっても良さそうなのにね。 ヤッチーからはこんなコメントも。【先生のブログ楽しく拝見しています。日本中を走り回り、添削の山を片っぱしからかたずけ、原稿をかきまくっているバイタリティー溢れる先生に驚いています。くれぐれも飲みすぎに注意してお身体ご自愛くださいませ。】←ありがと〜♪ |
2010.12.15 |
12 | 尼寺の小便小僧冬帽子 あまでらのしょうべんこぞうふゆぼうし |
冬帽子 | 冬 | 本日の入選作 | 小便小僧の寒さに寄り添っての一句か。 | 2010.12.1 |
11 | スペイン語飛交ふ街に芋の秋 すぺいんごとびかうまちにいものあき |
芋の秋 | 秋 | 本日の入選作 |
【アンデス地方の人々と収穫された芋を結び付けてみました】と作者は解説していますが、「スペイン語飛交う街」の情景から「芋の秋」という季語へのささやかなジャンピングがこの句の面白さですね。 |
2010.11.25 |
10 |
ガレリアの道に迷ひて秋の闇 |
秋の闇 | 秋 | 本日の一句 五分咲き |
【今回も映画ネタです。アルゼンチンの映画「僕と未来とブエノスアイレス」の中のガレリア(商店街)に身を置いてみました】というこの映画、見たことないなあ。「秋の闇」という季語が、心の深部を表現しているようでもある一句。「ガレリア」という音の響きにもどこか秋の憂いがあるような気がするのは、私の妄想?でしょうか。 | 2010.11.18 |
9 | 春は曙搭乗時刻の迫り来る はるはあけぼのとうじょうじこくのせまりくる |
春は曙 | 春 | 本日の一句 七分咲き |
「春は曙」という清少納言著『枕草子』の冒頭の言葉をうまく拝借した一句です。中七下五で、空港の場面に切り替わるところも巧いですね。【アジアンビーチのヴィラともお別れです。荷造りも終わっています。雨が降ってきました。タクシーはまだかしら…こんなイメージです】と語る作者ヤッチーさん。これぞ本歌取り?の技でありますね。 | 2010.10.24 |
8 | 毅然たるドヌーヴの朱の薄衣 きぜんたるどぬーぶのしゅのうすごろも |
薄衣 | 夏 | 本日の入選作 |
こちらはフランス映画。【今回も映画ネタからです。カトリーヌ・ドヌーヴの「インドシナ」いつき先生お忙しくてこれも観ていませんか?】観てないな〜映画のどんな場面が「今月の音」とリンクしたのか知りたいな〜。 | 2010.10.6 |
7 | 簾戸越しに着付け急がす声のする すどごしにきつけいそがすこえのする |
簾戸 | 夏 | 本日の一句 七分咲き |
「浴衣」という言葉も、「祭り」という言葉も、「花火」という言葉も、「夜店」という言葉もどこにもないんだけど、「簾戸」という夏の季語を使うことで、それら諸々の光景を読者に想像させているのが、この句の面白さです。【お嬢様は浴衣も自分で着付けられないのです。ばあやも汗だくです】というコメントからすると、かなりの豪邸のお嬢様? | 2010.9.20 |
6 | でで虫やシンガポールの野鳥園 ででむしやしんがぽーるのやちょうえん |
でで虫 | 夏 | 本日の入選作 |
【雨の降っているシンガポールの野鳥園(行ったことはありませんが)にいるデンデンムシを想像しました】という作者。色彩豊かな亜熱帯の鳥たちに対して、「でで虫」の地味さがいいなあ | 2010.8.22 |
5 | 潮焼けのデカプリオ追ひビーチまで しおやけのでかぷりおおいびーちまで |
潮焼け | 夏 | 本日の一句 つぼみ |
夏井いつき選「今月の音」がそう聞こえましたかシリーズ。【何処からかあの「ビーチ」のディカプリオが出てきそう!】というヤッチー。わたしゃ、見て無いなあ。ネットで調べてみると【レオナルド・ディカプリオ主演のミステリアス・アドベンチャー】なのだそうな。水の音らしき「今月の音」から、映画の世界に飛び込める君の想像力に乾杯だ! | 2010.8.5 |
4 | 六月の花嫁送る調律師 ろくがつのはなよめおくるちょうりつし |
六月 | 夏 | 本日の入選作 |
【教会の結婚式のためにオルガンの調律をする父。その結婚式の主役は一人娘をイメージ】という作者の弁。この17音で「父」…とまでは読み取りにくいですが、「六月の花嫁」への祝福をこめて教会のオルガンを調律しているであろう「調律師」の存在ははっきりと伝わります。 | 2010.7.10 |
3 | 食卓の青いパパイヤ初夏の朝 しょくたくのあおいぱぱいやしょかのあさ |
初夏 | 夏 | 本日の入選作 |
【映画「青いパパイヤの香り」のサイゴンの朝食シーンが目の前に広がりました】という、この映画を私は見たことがないんだけど、「初夏の朝」という季語が「青」をさらに清々しいものにしています | 2010.6.25 |
2 | 外つ国の物売りの声初夏の朝 とつくにのものうりのこえしょかのあさ |
初夏 | 夏 | 本日の入選作 |
【沢木耕太郎の「深夜特急」のアジア編に入り込んだ気分】という想像にも共感。「初夏の朝」が爽快な一句。 | 2010.6.17 |
1 | 春節の土産抱ふる始発駅 しゅんせつのみやげかかうるしはつえき |
春節 | 春 | 本日の一句 五分咲き |
【時計と鼓動のような音を背景に中国の混雑している駅をイメージしました】と語るヤッチー君。「春節」は、中国圏での旧正月の行事。 新暦のお正月よりも盛大にお祝いするのだそうです。 都会で働いて買った「土産」をたくさんかかえた人たちが集まってくる「始発駅」。 まさに「春節」の賑やかさに満ちた一句になりました。 |
2010.4.19 |