伊吹嶺HP俳句会

選者・伊吹嶺同人

2013年4月〜2016年1月

全66句「特選」2句「並選」27句


俳号・ヤチヨ→ヤチ代

俳句会 全応募作品数 番号 評価 俳句 季題 季節 講評
2016年1月 106句 66 なし 手始めの掌に載る福達磨

てはじめのてのひらにのるふくだるま
福達磨 新年
65 国枝隆生 並選

河原地英武 並選
クリームを手にたつぷりと寝正月

くりーむをてにたっぷりとねしょうがつ
寝正月 新年
2015年12月 97句 64 渡辺慢房 並選 銭湯の山茶花見上ぐ露天風呂

せんとうのさざんかみあぐろてんぶろ
山茶花
63 なし 数へ日の無料の暦頂きぬ

かぞえびのむりょうのこよみいただきぬ
数え日
2015年11月 97句 62 なし 短日の対局勝を譲る夫

たんじつのたいきょくかちをゆずるつま
短日
61 坪野洋子 並選

河原地英武 並選

国枝隆生 並選

鈴木みすず 並選
小春日や床屋の古き漫画本

こはるびやとこやのふるきまんがぼん
小春日 2015年11月伊吹嶺HP句会講評 国枝 隆生
どこの理髪店にも漫画本が置いてあるようです。大抵の理髪店は大きなガラス窓に
なっていますから、冬になっても暖かい日ざしが差し込んでいると思います。まさに
「小春日」の季語がぴったりです。「古き漫画本」から日差しに受けた漫画本は表紙
がすっかり色あせた様子がよく見え、観察がしっかりしていると思います。
ただ原句がよいか「床屋に古き漫画本」がよいか迷うところですが、よく「に」を
使うと説明的になると言われていますが、私は「に」の方がおさまりがよいと思いま
した。
2015年9月 81句 60 なし 金星に座布団の舞ふ九月場所

きんぼしにざぶとんのまうくがつばしょ
九月場所
59 なし 秋風にピアノの楽譜少しずれ

あきかぜにぴあののがくふすこしずれ
秋風
2015年8月 84句 58 なし 残る歯の数の自慢や生身魂

のこるはのかずのじまんやいきみたま
生身魂
57 中野一灯 並選 洋梨のねつとりと刃に絡みけり

ようなしのねっとりとはにからみけり
洋梨 【講評】2015年8月 伊吹嶺HP句会講評渡辺慢房

洋梨のねつとりと刃に絡みけり

季語の説明的に感じました。

今回選者によって並選と選外(たぶん)にわかれた句がありました。
並選にとってくださった選者に感謝ですかね。
2015年7月 87句 56 鈴木みすず 並選 新しき下駄をおろせりパナマ帽

あたらしきげたをおえおせりぱなまぼう
パナマ帽
55 なし 強弱を濃淡に変へ青田風

きょうじゃくをのうたんにかえあおたかぜ
青田風
2015年6月 88句 54 伊藤範子 並選 翡翠の青空の蒼水の藍

かわせみのあおそたのあおみずのあお
翡翠
53 なし 新茶汲む日本手拭首に掛け

しんちゃくむにほんてぬぐいくびにかけ
新茶
2015年5月 87句 52 国枝隆生 並選 藍染の座布団カバー夏始

あいぞめのざぶとんかばーなつはじめ
夏始
51 坪野洋子 並選

国枝隆生 並選

河原地英武 並選
梅雨晴や折り目正しく畳む傘 

つゆばれやおりめただしくたたむかさ
梅雨晴 2015年5月 伊吹嶺HP句会講評 国枝 隆生
この句は、「折り目正しく畳む」の写生がしっかりしています。
作者自身、このような動作を信条としているのでしょうか。
「梅雨晴」に対する「折り目正しく」と詠んだことに、私は
「暑き故ものをきちんと並べをる 細見綾子」の句を連想し、
綾子先生の暑いからこそ物事をきちんと行うこととこの句の「折り目正しく」に相通じるものを感じました。
2015年4月 80句 50 なし 高尾山笑ひてリフト列を成す 

たかおざんわらいてりふとれつをなす
山笑う 2015年4月 伊吹嶺HP句会講評 渡辺慢房
気になる点のある句について述べてみます。

「高尾山笑ひてリフト列を成す」
山が笑う イコール ハイキングのシーズン だ・か・ら リフトに列ができる・・・
というように、理屈っぽくなってしまいました。
49 なし 春塵を子等固まりて遣り過す 

しゅんじんをこらかたまりてやりすごす
春塵
2015年3月 76句 48 国枝隆生 並選

坪野洋子 並選
野遊びや持寄り弁当分け合ひて

のあそびやもちよりべんとうわけあいて
1野遊び
47 坪野洋子 特選
春炬燵旅行雑誌の色付箋

張るこたつりょこうざっしのいろふせん
春炬燵
2015年2月 76句 46 なし からくりの時報揺らぎて春の園 

からくりのじほうゆらぎてはるのその
春の園
45 なし 春灯に影絵の鳥を羽ばたかせ 

しゅんとうにかげえのとりをはばたかせ
春灯
2015年1月 76句 44 なし 福引の欲無き人に当たりけり 

ふくびきのよくなきひとにあたりけり
福引 新年 2015年1月 伊吹嶺HP句会講評 国枝 隆生
気になったことを述べたいと思います。

一句の中に、理屈が入りますと、選者としては腰が引けてしまいます。
「欲無き人に当たりけり」は福引きはあまり欲を出さないで、欲のない人ほどよく当
たるという教訓を読んでいるような印象を受けました。
俳句には理屈は要りません。
見たままの写生から作者の感動が伝わってくる句が採りたい句です。
43 なし 家族の名書いて並べてお年玉 

かぞくのなかいてならべておとしだま
お年玉 新年
2014年12月 80句 42 なし 極月のあれよあれよと時過ぐる 

ごくげつのあれよあれよとときすぐる
極月

【講評】 渡辺 慢房
気になった句について講評したいと思います。
 
まぁ、そうですね。

41 なし 探梅の現地集合古き駅 

たんばいのげんちしゅうごうふるきえき
探梅
2014年11月 78句 40 坪野洋子 並選

国枝隆生 並選

鈴木みすず 並選

河原地英武 並選
髪を切る椅子を持出す小春かな 

かみをきるいすをもちだすこはるかな
小春
39 なし 薬味なる葱を刻んで〆の蕎麦 

やくみなるねぎをきざんでしめのそば
2014年10月 84句 38 なし 吉報のノーベル賞や菊日和 

きっぽうののーべるしょうやきくびより
菊日和
37 なし 台風裡キルト縫う手をしばし止め

たいふうりきるとぬうてをあいなしとめ
台風裡
2014年9月 85句 36 なし 葉をつけて秋の果物並ぶ市

はをつけてあきのくだものならぶいち
秋の果物
35 なし 秋暑し濡れて乾いた回覧板

あきあつしぬれてかわいたかいらんばん
秋暑し
2014年8月 86句 34 なし 花茗荷摘みて朝餉の椀香る

はなみょうがつみてあさげのわんかおる
花茗荷
33 なし 枝豆のさやを切る音小気味よし 

えだまめのさやをきるおとこきみよし
枝豆
2014年7月 85句 32 なし 園長の鍔の欠けたる麦藁帽 

えんちょうのつばのかけたるむぎわらぼう
麦藁帽
31 なし 子等去りて浮人形のしどけなし 

こらさりてうきにんぎょうのしどけなし
浮人形 【講評】 渡辺 慢房
気になった句を取り上げてみます。

何となく共感する句です。子供達(または孫?)が帰ったあとのほっとした気分と少し
疲れた気分を「浮き人形のしどけなし」と擬人化して、「浮き人形」に託したのだと思
いますが、今ひとつ作者の思いが届きませんでした。擬人化法を使うときはよほどその
擬人化がぴったりと効果的な表現がほしいところです。「しどけなし」からは作者の気
持ちを代弁する印象が受け取れませんでした。下5を推敲すればよくなる句だと思いまし
た。
2014年6月 92句 30 なし 居住まいの粋になりにけり夏座敷  

いずまいのいきになりにけりなつざしき
夏座敷 【講評】 渡辺 慢房
気になった句を取り上げてみます。

居住まいが粋になったと言っても具体的な景が見えて来ません。どんなところに粋を感じたのか、具体的な所作・挙動などを詠むと良いと思います。
29 なし もう次は無きと噂の植田かな 

もうつぎはまきとうわさのうえたかな
植田
2014年5月 98句 28 なし 夏めくとクローゼットにある隙間 

なつめくとくろーぜっとにあるすきま
夏めく
27 なし 軟球の破れて朽ちる麦畑 

なんきゅうのやぶれてくちるむぎばたけ
麦畑
2014年4月 93句 26 伊藤範子 並選

渡辺慢房 並選
スカートの裾少し濡れ春の海 

すかーとのすそすこしぬれはるのうみ
春の海
25 なし 真実も嘘になりけり万愚節 

しんじつもうそになりけりばんぐせつ
万愚節
2014年3月 90句 24 河原地英武  特選


坪野洋子 並選

国枝隆生 並選
釣り糸の宙を切る音風光る 

つりいとのちゅうをきるおとかぜひかる 
風光る 【講評】国枝 隆生

春の明るい風景です。この釣りは釣り竿でなく、リールで糸を飛ばしたのでしょう。
その時の風切る音を「宙を切る」との表現を得たのも新鮮です。季語の「風光る」がこれ以上のふさわしい季語はないと思わせます。
23 なし 鳥雲に折ってつなげる千羽鶴 

とりぐもにおってつなげるせんばずる
鳥雲に
2014年2月 100句 22 なし 大胆に高き理想の受験絵馬 

だいたんにたかきりそうのじゅけんえま
受験
21 なし 階段を転びて小指折る二月 

かいだんをころびてこゆびおるにがつ
二月 【講評】 渡辺 慢房
気になった句を取り上げてみます。

先ずはお見舞い申し上げます。
二月は、四月でも五月でも九月でも睦月でも師走でも良いのではないでしょうか。
2014年1月 99句 20 なし 耳鳴りの消えぬゴスペル仏の座

みみなりのきえぬごすぺるほとけのざ
仏の座 新年
19 なし 筆始斜めに減つた墨を磨る

ふではじめななめにへったすみをする
筆始 新年
2013年12月 98句 18 なし 毛糸編む一生徒より広まるる

けいとあむいちせいとよりひろまるる
毛糸編む 【講評】 渡辺 慢房
気になったところのある句です。

一人の生徒が編み物を始めたら、他の生徒にも編み物が流行るようになったという意味かと思いますが、そのように解釈するのは難しいです。社会現象は俳句の句材にはなりにくいです。
17 なし 侘助や母の点前の薄茶飲む

わびすけやははのてまえのうすちゃのむ
侘助
2013年11月 106句 16 なし イスラムのモスクを訪ぬ神の留守 

いすらむのもすくをたずぬかみのるす
神の留守
15 なし 時雨るるや京の野菜をお取り寄せ

しぐるるやきょうのやさいをおとりよせ
時雨 【講評】 矢野孝子
問題点としては・・・・・

一句の中で<お取り寄せ>や<檜のお風呂>の<お>が、句全体を甘くしているようにも思いました。
2013年10月 102句 14 なし 運動会目立つリボンのお下げ髪

うんどうかいめだつりぼんのおさげがみ
運動会
13 矢野孝子 並選 歌舞伎座の席に忘れし秋扇

かぶきざのせきにわすれしあきおうぎ
秋扇
2013年9月 104句 12 坪野洋子 並選 重陽や試飲の猪口に紅の跡

ちょうようやしいんのちょこにべにのあと
重陽
11 なし 蜩や部活帰りの大欠伸

ひぐらしやぶかつがえりのおおあくび
2013年8月 108句 10 なし からくりの時計弾ける秋の天

からくりのとけいはじけるあきのてん
秋の天
9 なし 鈍行の出発進行秋の風

どんこうのしゅっぱつしんこうあきのかぜ
秋の風
2013年7月 100句 8 坪野洋子 並選 打水や明日の天気の話など

うつみずやあすのてんきのはなしなど
打水
7 なし 配られし団扇皆持つ繁華街

くばられしうちわみなもつはんかがい
団扇
2013年6月 107句 6 なし 美容師に肩叩かれる昼寝覚

びようしにかたたたかれるひるねざめ
昼寝覚
5 なし 携帯のいやに明るき五月闇

けいたいのいやにあかるきさつきやみ
五月闇
2013年5月 107句 4 なし 清和かなヨガ教室の弓ポーズ

せいわかなよがきょうしつのゆみぽーず
清和
3 なし 夏めくや下駄の音響く剣士どち

なつめくやげたのねひびくけんしどち
夏めく
2013年4月 96句 2 なし 実家てふ大義名分朝寝かな

じっかというたいぎめいぶんあさねかな
朝寝
1 なし 夕桜下拵への済みにけり

ゆうざくらしたごしらえのすみにけり
夕桜