e船団週刊今週の十句
選者・e船団会員
2013年3月〜2020年6月24日終了
俳号・ヤチヨ→ヤチ代
番号 | 句 | 季語 | 季節 | 選者 | 講評 | 日付 |
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40 | 亀の子を売る琺瑯の洗面器 かめのこをうるほうろうのせんめんき |
亀の子 | 夏 | 中居由美 | 【十句選】 夜店などでよく見かけるいわゆる銭亀。琺瑯の洗面器(たぶん、どこか欠けている)で売られているのが哀れである。 |
2020.6.24 |
39 | こんもりと身籠もる人と葉桜と こんもりとみごもるひととはざくらと |
葉桜 | 夏 | 秋月祐一 | 【十句選】 「こんもり」という副詞は、丸く盛り上がったさまと、木が生い茂ったさま双方にかかる、という発見にもとづく句。葉桜と重ね合わされたことで、「身籠もる人」がより美しく見えてくる。 |
2020.6.3 |
38 | 地べた打つ大縄跳びや春の雲 じべたうつおおなわとびやはるのくも |
春の雲 | 春 | 須山つとむ | 【十句選】 地面とは言わず、『地べた』と。この俗っぽい言い方がこの句に春の息吹きをもたらした。冬の季語『縄跳び』が春の小道具に変身した。峰に浮かぶ白い雲は、春の主役を演じ始めた。 |
2020.4.1 |
37 | 施餓鬼会の僧の明るきお説教 せかきえのそうのあかるきおせっきょう |
施餓鬼会 | 秋 | 星野早苗 | 【十句選】 地獄で飢えと渇きに苦しんでいる餓鬼のため、食物や飲み物を供えて法要するのが施餓鬼会です。施餓鬼会のお説教と言えば、餓鬼道に落ちた者の怖いお話が多いと思うのですが、明るいお説教を聞かれたのですね。「明るき」は、施餓鬼会の全体の雰囲気も伝えていると思いました。 |
2019.10.9 |
36 | 地虫出ておむつ外しもそろそろね じむしでておむつはずしもそろそろね |
地虫出づ | 春 | 須山つとむ | 【十句選】 子育てに苦労し、新しい発見もしたりして、生活を楽しんでいる家庭がほほえましい。上五『地虫出て』を、『地虫出づ』と季語のまま言い切って、生活感(?)を消し去る方法も。 |
2019.5.1 |
35 | 椿の木陰に小動物の墓 つばこのこかげにしょうどうぶつのはか |
椿 | 春 | 秋月祐一 | 【十句選】 「椿」の季節になると、根元に埋めた小動物のことを思い出すのだろう。椿の赤が効いているが、「椿の」の字足らずに、つまずくような感覚がある。植物名を工夫して、上五を五音にしてみては? |
2019.3.13 |
34 | 蜜豆と留守番電話聞いてをり みつまめとるすばんでんわきいてをり |
蜜豆 | 夏 | 谷さやん | 【十句選】 帰宅してみると、留守電のボタンがチカチカ点滅している。でも、まずは冷蔵庫から楽しみな蜜豆を出してくることから。 蜜豆とともに聞く留守電は「聞いており」なので、少し長そう。 |
2018.5.16 |
33 | 出戻りの原因不明トマト食ぶ でもどりのげんいんふめいとまとたぶ |
トマト | 夏 | 秋月祐一 | 【十句選】 下五の「トマト食ぶ」で、一気に景が浮かんできました。 出戻りの女性が、昼の電気を消したままのうす暗いキッチンで(あるいは、流し場の明かりだけがついた夜のキッチンで)丸のままのトマトにかじりついています。 トマトも自宅の畑でとれた青臭くて、味の濃いやつと想像しました。 |
2017.7.6 |
32 | 都会より二百十日のメール来る とかいよりにひゃくとうかのめーるくる |
二百十日 | 秋 | 中居由美 | 【十句選】 二百十日の頃は、気候の変わり目で暴風雨の襲来することが多く、農家では厄日とされている。 都会に住む子供からのお見舞いメールだろうか。 都会と農村の対比が面白い。 |
2016.10.19 |
31 | 水澄みて足もピンクやフラミンゴ みずすみてあしもぴんくやふらみんご |
水澄む | 秋 | えみなしんさ | 【十句選】 9句選んで、あと1句にこれをいただきました。 フラミンゴの足がピンクというのは当たり前ですが、「水澄みて」で足もとに注目させたのが良いと思います。 「足も」で素直なのですが、「足が」もあるか〜。 |
2016.9.28 |
30 | 夫の名を一瞬忘れ四月馬鹿 つまのなをいっしゅんわすれしがつばか |
四月馬鹿 | 春 | えみなしんさ | 【次点句】 英語で聞かれたりすると自分の名前が言えなくなったりすることがあります(マサカ)。 この方も実話でしょう(笑)。 |
2016.4.13 |
29 | 海豹のぬるりと潜る御講凪 あざらしのぬるりともぐるおこうなぎ |
御講凪 | 冬 | 須山つとむ | 【十句選】 アザラシと音読すると、春の季語となる。 だが、カイヒョウと音読し、聞き慣れない冬の季語(天文)『御講凪(オコウナギ)』に着目したい句。 中七『ぬるりと潜る』に当たったのだ。 |
2015.12.16 |
28 | 更衣根性焼きといふ過失 ころもがえこんじょうやきというかしつ |
更衣 | 夏 | 久留島元 | 【選外佳作】 昔の悪事、または、悪事「された」記憶でしょうか。ドラマがありそう。 |
2015.6.10 |
27 | 柏餅玉三郎の喉仏 かしわもちたまさぶろうののどぼとけ |
柏餅 | 夏 | 中居由美 | 【十句選】 玉三郎の喉仏をそばで見たことがありませんが、見たような気分になります。 美しい手で柏餅を掴む。 それを食べる。 ごくんと飲み込む。 まるでスローモーションのような動きです。 この喉仏、艶っぽいですね。 |
2015.6.3 |
26 | 麦秋をティンカーベルの羽の音 ばくしゅうをってぃんかーべるのはねのおと |
麦秋 | 夏 | 内野聖子 | 【十句選】 野山が緑色になっている中に黄金色の麦畑の景色は本当に美しいものです。 その中をティンカーベルが飛び回っているというファンタジーですね。 |
2015.5.27 |
25 | 笑ひ顔など無き猿を廻しをり わらいがおなどなきさるをまわしおり |
猿廻し | 新年 | えなみしんさ | 【十句選】 これはシリアスな句。 猿回しを見て、みんな笑っている。 でも、猿は真剣そのもの。 その事に気づいたのは、この作者だけかも知れません。 |
2015.1.21 |
24 | 反返る上野の白長須鯨 そりかえるうえののしろながすくじら |
白長須鯨 | 冬 | 久留島元 | 【十句選】 大胆に、地名と動物名を重ねたところがはまりました。 |
2014.12.24 |
23 | 傾城の赤き眦曼珠沙華 けいせいのあかきまなじりまんじゅしゃげ |
曼珠沙華 | 秋 | 岡野泰輔 | 【曼珠沙華問題】 それぞれ別の作者ですが、この傾向の句は実に多い。 この花の色、姿、漢字の字面、などがこのようにヘヴィーな世界に誘うのでしょうか。 それぞれ力作で悪くはないのですが新鮮ではありません。 この世界で詠むのでしたら、よほどの工夫が必要でしょう。 |
2014..10.8 |
22 | 泡風呂に浸る二百十日かな あわぶろにひたるにちゃくとうかかな |
二百十日 | 秋 | 須山つとむ | 【十句選】 厄日の二百十日も難なく過ぎようとする一刻。プラズマ湯ではない。お馴染みの泡風呂に、安堵と喜びにゆったり浸るオトコの姿。さりげない措辞『浸る』のもつ現実味を評価した。 |
2014..9.24 |
21 | 向日葵や耳を殺がれし琵琶法師 ひまわりやみみをそがれしびわほうし |
向日葵 | 夏 | 早瀬淳一 | 【ひとことクリニック】 ◎あたりまえ・そのまま | 2014.7.2 |
20 | あの帽子ぐりとぐらでしょ万緑裡 あのぼうしぐりとぐらでしょばんりょくり |
万緑 | 夏 | 朝倉晴美 | 【十句選】 万緑という季語は、 〈万緑の中や吾子の歯生え初むる 草田男〉 から定着したと言われますが、掲句もまたおおきな挑戦の句でしょう。 大ベストセラー名作絵本『ぐりとぐら』を句材に、「でしょ」という流行語でもある口語。 やはり、俳句は挑戦しなければ、という思いのもといただきました。 〈万緑の万物の中大仏 虚子〉 例句も挑戦句のはず。万の連続はもちろん、ばん、ばん、ぶつ、ぶつ、の音の連続も。 |
2014.6.4 |
19 | 気付いても気付かぬふりや黄水仙 きずいてもきずかぬふりやきずいせん |
黄水仙 | 春 | 早瀬淳一 | 【ひとことクリニック】 ◎その他 ・・ふりで分かるので、上5はいりません。 |
2014.5.7 |
18 | 桜なら許してくれる喜怒哀楽 さくらならゆるしてくれるきどあいらく |
桜 | 春 | 小西雅子 | 【気になる句】 一見上手く作れていそうですが、「喜怒哀楽」が抽象的です。 なので「桜」でなくても合ってしまいます。 いわゆる「季語が動く」という句です。 |
2014.4.30 |
17 | チューリップチュっと奪はれプと笑ふ ちゅーりっぷちゅっとうばわれぷとわらう |
チューリップ | 春 | 久留島元 | 【十句選】 ういういしい学生同士などの恋愛を想像します。同じ趣向はたくさんありますが、擬音だけで成立させたことは努力賞ですね。 (全193句) |
2014.3.19 |
16 | 湯ざめしてリンスインシャンプー怒る ゆざめしてりんすいんしゃんぷーおこる |
湯ざめ | 冬 | 朝倉晴美 | 【予選】 | 2014.2.12 |
15 | バイソンの角の先から寒明ける ばいそんのつののさきからかんあける |
寒明 | 春 | 久留島元 | 【選外佳作】 雄大な光景、それとも案外、動物園? |
2014.2.5 |
14 | 福笑ひアバンギャルドに仕上りぬ ふくわらいあばんぎゃるどにしあがりぬ |
福笑ひ | 新年 | 早瀬淳一 | 【ひとことクリニック】 「あたりまえ」 |
2014.1.15 |
13 | 白葱を刻むうどんの茹で上がる しろねぎをきざむうどんのゆであがる |
葱 | 冬 | 芳野ヒロユキ | 【十句選】 切り取っている情景は句の材料として素晴らしいのに状況報告に終わっていて残念です。 「白葱を刻むうどんは耳から食う」 とかに仕上げるととてもおいしそうなうどんの出来上がりを待っている気持ちが表現できると思いませんか。 (全177句) |
2014.1.8 |
12 | 象の鼻器用に練馬大根引く ぞうのはなきようにねりまだいこひく |
大根引く | 冬 | 朝倉晴美 | 【次点句】 | 2013.12.11 |
11 | 山茶花山茶花山茶花三三が九 さざんかさざんかさざんかさざんがく |
山茶花 | 冬 | 南村健治 | 【予選句】 | 2013.11.27 |
10 | 舌を出すアインシュタイン神の留守 したをだすあいんしゅたいんかみのるす |
神の留守 | 冬 | 早瀬淳一 | 【選外佳作】 途中まではありますが、神の留守が絶妙ですね。 |
2013.11.15 |
9 | コスモスの下にマンモスモスチキン こすもすのしたにまんもすもすちきん |
コスモス | 秋 | 芳野ヒロユキ | 【十句選】 「に」で視覚になってしまっている。 「で」を使ってもっと俗にしてあるともっと好きです。 |
2013.11.6 |
8 | ママチャリの後ろの籠に秋意かな ままちゃりのうしろのかごにしゅういかな |
秋意 | 秋 | 小西雅子 | 【気になる句】 「秋意」が惜しかったです!「秋の星」とか「秋の風」のようにもう一歩接写を。 |
2013.10.30 |
7 | 象に乗り象の耳より秋の風 ぞうにのりぞうのみみよりあきのかぜ |
秋の風 | 秋 | 朝倉晴美 | 【予選通過句】 | 2013.10.9 |
6 | 陳さんのコック帽より山椒の実 ちんさんのこっくぼうよりさんしょのみ |
山椒の実 | 秋 | 南村健治 | 【予選句】 | 2013.9.25 |
5 | 月の座にスピルバーグの指定席 つきのざにすぴるばーぐのしていせき |
月の座 | 秋 | 芳野ヒロユキ | 【十句選】 俳句にスピルバーグを詠んだところが実に面白い。 |
2013.8.28 |
4 | ライオンの欠伸色なき風の中 らいおんのあくびいろなきかぜのなか |
色なき風 | 秋 | 岡野泰輔 | 【予選句】 秋風が色なき風になるだけで全く違う。俳句は言葉でできていると改めて、、 |
2013.8.21 |
3 | 炎昼の埃臭さにジョン・ウェイン えんちゅうのほこりくささにじょん・うぇいん |
炎昼 | 夏 | 早瀬淳一 | 【ひとことクリニック】 ◎こうされては? 中七を「埃から来る」 |
2013.7.10 |
2 | マネキンのヌード曝して更衣 まねきんのぬーどさらしてころもがえ |
更衣 | 夏 | 朝倉晴美 |
【予選句】 マネキンと更衣の句は、珍しくないのです。残念。ヌードはウイットがあります。 |
2013.6.5 |
1 | 派手好きは隔世遺伝アマリリス はでずきはかくせいいでんあまりりす |
アマリリス | 夏 | 早瀬淳一 | 【一言診断】 ◎こうされては? ・・下五を猫柳 (猫柳・春の季語) |
2013.5.8 |