「HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画」

「自由律俳句計画」入選句

選者・きむらけんじ


俳号・ヤッチー

2013年6月号〜2020年1月

番号 評価 季語 季節
80 2020年1月号 エコバックに入る熊手

えこばっくにはいるくまで
熊手
講評
枯葉を掃く熊手そのものではなく、関東方面の酉の市でうられる、おかめの面とか小判などの援護ものを
これでもかというほど飾りつけてある熊手だろう。
いわば虚飾のオンパレードともいえるものとエコバックの対比の面白さをみちけた観察眼が全てといえます。
何かの見出しみたいになり過ぎているのがやや気になりますが・・・。
79 2019年12月号 鹿の目の威嚇受けて立つ

しかのめのいかくうけてたつ
鹿
78 2019年11月号 長男の盆用意

ちょうなんのぼんようい
盆用意
77 2019年10月号 天の川ほどの遠距離恋愛

あまのがわほどのえんきょりれんあい
天の川
76 2019年9月号 寝ながら声を出して笑う熱帯夜

ねながらこえをだしてわらうねったいや
熱帯夜
75 2019年8月号 人驚かす鎮座の蝦蟇

ひとおどろかすちんざのがま
蝦蟇
74 2019年7月号 銭亀の出られぬ琺瑯の洗面器

ぜにがめのでられぬほうろうのせんめんき
銭亀
73 2019年6月号 地虫出てくる真っ昼間

じむしでてくるまっぴるま
地虫出づ
72 2019年5月号 卒業の国旗と校旗とグランドピアノ

そつぎょうのこっきとこうきとぐらんどぴあの
卒業
71 2019年4月号 三椏の花掛け算割り算鶴亀算

みつまたのはなかけざんわりざんつるかめざん
三椏の花
70 2019年3月号 極寒の極熱の極太の饂飩

ごっかんのごくねつのごくぶとのうどん
極寒
69 2019年2月号 白鳥の中に黒鳥

はくちょうのなかにこくちょう
白鳥
68 2019年1月号 七五三今年も七歳不二家のペコちゃん

しちごさんことしもななさいふじやのぺこちゃん
七五三
67 2018年12月号 東京都下の門扉にシーサー

とうきょうとかのもんぴにしーさー
無季
66 2018年11月号 檸檬キュット搾る香りパット充満

れもんきゅっとしぼるかおりぱっとじゅうまん
檸檬
65 2018年10月号 ピポットとフェイントで飛ぶトンボ 

ぴぽっととふぇいんとでとぶとんぼ
トンボ
64 2018年9月号 草間彌生好きのてんとむし

くさまやよいずきのてんとむし
てんとむし
63 2018年8月号 ボート漕ぐ彼に釘付け

ぼーとこぐかれにくぎずけ
ボート
62 2018年7月号 瑞西の避暑と安楽死

すいすのひしょとあんらくし
避暑
61 2018年6月号 孕むものの母性本能

はらむもののぼせいほんのう
無季
60 2018年5月号 老夫妻の朝寝

ろうふさいのあさね
朝寝
59 2018年4月号 深呼吸して田螺鳴く

しんこきゅうしてたにしなく
田螺
58 2018年3月号 羽子つきに見た本性

はねつきにみたほんしょう
羽子つき 新年
57 2018年2月号 沢庵漬の座り良き石

たくあんづけのすわりよきいし
沢庵漬
講評
年季が入った沢庵漬の樽には、おそらくそれなりの風貌を持った沢庵石が座っているのだろう。
単なる重しという役目を超え、糖と塩と素材を調和させるには、座り良き石っでなければならないような気にさせる。
56 2018年1月号 暖炉が見詰める一家団欒

だんろがみつめるいっかだんらん
暖炉
55 2017年12月号 噂話の震源何処ああそぞろ寒 

うわさばなしのしんげんいずこああそぞろざむ
そぞろ寒
54 2017年11月号 観光望遠鏡100円分の銀河

かんこうぼうえんきょうひゃくえんぶんのぎんが
銀河
53 2017年10月号 切る前に母だけが知る黄色い西瓜

きるまえにははだけがしるきいろいすいか
西瓜
52 2017年9月号 土用波校庭に大縄跳びの縄

どようなみこうていにおおなわとびのなわ
土用波
51 2017年8月号 宅急便のトラック青田波に乗る

たっきゅうびんのとらっくあおたなみにのる
青田波
50 2017年7月号 約束を破って針千本の昼寝覚 

やくそくをやぶってはりせんぼんのひるねざめ
昼寝覚
49 2017年6月号 桜鯛の鱗爪に着けたら海の中

さくらだいのうろこつめにつければうみのなか
桜鯛
48 2017年5月号 たらればにリセットボタン欲し大試験

たらればにりせっとぼたんほしだいしけん
大試験
47 2017年4月号 立春の教室壁一面に習字の立春

りっしゅんのきょうしつかべいちめんにしゅうじのりっしゅん
立春
46 2017年3月号 読めても取れない歌かるた

よめてもとれないうたかるた
歌かるた 新年
45 2017年2月号 二重跳びと虎落笛

にじゅうとびともがりぶえ
虎落笛
44 2017年1月号 画廊の隅の膝掛の職員 

がろうのすみのひざかけのしょくいん
膝掛
講評
俳句というより、一見なにかの文章の小見出しかと、しかし「画廊の隅」がきになるし「膝掛の職員」も気になる。
いわゆるデジャブ(視感)に絡めとられる不思議な句。
まったく作意がかんじられないぶっきらぼうさが却ってインパクトを与えている。
43 2016年12月号 月を狙って片目瞑って指鉄砲 

つきをねらってかためつぶってゆびでっぽう
42 2016年11月号 虫時雨耳鳴り空耳中耳炎

むししぐれみみなりそらみみちゅうじえん
虫時雨
41 2016年10月号 月を見ながら目薬を差す

つきをみながらめぐすりをさす
40 2016年9月号 熱帯夜とて授乳

ねったいやとてじゅにゅう
熱帯夜
講評
熱帯夜の暑さを表現するのに「授乳」を持ってきたことに意表をつかれます。
母親の体温、おっぱいに吸いつく赤ちゃん。
その口中には温かい母乳があふれている・・・・・と想うだけでこれは相当暑苦しい光景です。
「熱帯夜と授乳」以外の余計な表現が無いのが、余計暑さを増幅させています。
39 2016年8月号 冷麦はボールペン素麺はシャープペン

ひやむぎはぼーるぺんそうめんはしゃーぷぺん
冷麦
38 2016年7月号 向日葵畑にソフィアローレンの目力

ひまわりばたけにそふぃあろーれんのめじから 
向日葵
講評
ソフィア・ローレンといえば、往年の伊の名女優(もう80歳は超えている)。
ダイナマイトボディとものすごい目力で世界中の映画ファンを席巻した。
と言っても若い人はしらないだろうけど。
揚句は、映画「ひまわり」のことだろうか。
「向日葵」「ソフィアローレン」「目力」、それで十分。
37 2016年6月号 鞦韆の下の潦

しゅうせんのしたのにわたずみ
鞦韆
36 2016年5月号 花粉症の厚化粧

かふんしょうのあつげしょう
花粉症
35 2016年4月号 耳鳴りか空耳か亀鳴くか

みみなりかそらみみかかめなくか
亀鳴く
講評
果たして耳鳴りなのか空耳なのか確信がもてない。
何だか春のように自分の身体もぼんやりしているのだろうか・・・・。
そこへ極めて情緒的な季語「亀鳴く」を強引に持ってくることで、ますます春の朧がふかまっている。
34 2016年3月号 化粧石鹸箱から出してお正月

けしょうせっけんはこからだしておしょうがつ
お正月 新年
33 2016年2月号 ロシア人の寒中水泳

ろしあじんのかんちゅうすいえい
寒中水泳
講評
これは寒そうだ。
フィンランド人でもノルウェー人でも句にならないような気がする。
俳句と何かの見出しのようなもののぎりぎりで、みごとにたっているような自由律俳句だと思う。
自由律の俳人によっては、こういうタイプの句を毛嫌いする狭小の人もいるかもしれないけど、
御託ならべて心に届かない句よりよっぽど良い。
32 2016年1月号 蒟蒻掘りからの調理実習

こんにゃくほりからのちょうりじっしゅう
蒟蒻掘る
31 2015年12月号 アルゼンチンタンゴとちんちろりん

あるぜんちんたんごとちんちろりん
ちんちろりん
30 2015年11月号 夜長の長居

ながよのなかい
夜長
29 2015年10月号 ちちろ鳴く日本家屋の洋式便座

ちちろなくにほんかおくのようしきべんざ
ちちろ
28 2015年9月号 うたたねの顔に黒し笑ひの白しハンカチ

転寝のかおにくろしわらいのしろしはんかち
ハンカチ
27 2015年8月号 揉み上げを切るプレスリー忌

もみあげをきるぷれすりーき
プレスリー忌
26 2015年7月号 マロニエの花似顔絵少しも似て居らず

まろにえのはなにがおえすこしもにておらず
マロニエの花
25 2015年6月号 ひとりで梅見

ひとりでうめみ
梅見
24 2015年5月号 握り締む遍路杖

にぎりしむへんろずえ
遍路杖
23 2015年4月号 無防備な春眠のライオン

むぼうびなしゅんみんのらいおん
春眠
22 2015年3月号 成人式色褪せし晴着のペコちゃん

せいじんしきいろあせしはれぎのぺこちゃん
成人式 新年
21 2015年2月号 女ですだって冬でもたわわな乳房

おんなですだってふゆでもたわわなちぶさ
20 2015年1月号 押しくら饅頭絶対好きな人の横

おしくらまんじゅうぜったいすきなひとのよこ
押しくら饅頭
講評
裏も表もないあっけらかんとした、
作者の人柄まで見えてきそうな句こういう作意がまったく感じられないような句は、
作ろうとすればかえって難しい。
好き!に理屈はないことを句にするのは至難の技です。
19 2014年12月号 幅を利かせる弁当箱のウサギの林檎

幅をきかせるべんとうばこのうさぎのりんご
林檎
18 2014年11月号 赤い羽根森下仁丹の匂ひ

あかいはねもりしたじんたんのにおい
赤い羽根
17 2014年10月号 夜食に噎せる

やしょくにむせる
夜食
16 2014年9月号 群青色の絵の具むにゅっと夏の地中海

群青色のえのぐむにゅっとなつのちちゅうかい
15 2014年8月号 ラジオ体操第1第2夏の早朝

ラジオたいそうだいいちだいになつのそうちょう
14 2014年7月号 大正生まれの姉妹の実家桐の花

たいしょううまれのしまいのじっかきりのはな
桐の花
13 2014年6月号 朝寝に負けざるものたちの鶏

あさねにまけざるものたちのにわとり
朝寝
12 2014年5月号 遠足には茹で卵

えんそくにはゆでたまご
遠足
11 2014年4月号 吉三の台詞を諳んじるには朧月

吉座のせりふをそらんじるにはおぼろずき
朧月
10 2014年3月号 どこからが寝酒

どこからがねざけ
寝酒
9 2014年2月号 木枯が四回転半の着地

こがらしがよんかいてんはんのちゃくち
木枯
8 2014年1月号 一人目も二人目も産んだ十一月初旬

ひとりめもふたりめもうんだじゅういちがつのしょじょん
十一月
7 2013年12月号 別にと言ふ君は秋

べつにというきみはあき
6 2013年11月号 タンドリーチキンお持ち帰りに月が出た

たんどりーしきんおもちかえりにつきがでた
5 2013年10月号 鬼灯を鳴らす口付き淫ら

ほおずきをならすくちつきみだら
鬼灯
4 2013年9月号 ラスベガスの噴水はダンサー

らすべがすのふんすいはだんさー
噴水
3 2013年8月号 つるんとにょきっと素足

つるんとにょきっとすあし
素足
2 2013年6月号 サブリナパンツ穿き夏闊歩

さぶりなぱんつはきなつかっぽ
1 行く春に髪切って爪伸ばす

ゆくはるにかみきってつめのばす